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北欧家具を代表する名作椅子 CARL HANSEN & SØN CH24(Yチェア WishBone Chair)

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Yチェアは、1950年にデンマーク人家具デザイナーであるハンス・J・ウェグナーによって生み出された椅子です。デンマークの家具メーカーであるカール・ハンセン&サン社から生産・販売されています。

ウェグナーによって24番目に生み出された椅子(Chair)ということで、正式名称は”CH24“になります。日本では背もたれの形状に対してY字を連想することから”Yチェア“という通称で呼ばれることが多いです。国によっては鳥の鎖骨に似ていることから”WishBone Chair“と呼ばれるそうです。

当初はウェグナーによって生み出された他の椅子に隠れる存在でしたが、インテリア誌や北欧家具の展示会などを通して注目を浴びるようになり、徐々に露出も増え、今では”Yチェアがある=北欧家具を扱っている“と思われるほど、日本では、北欧家具を代表する名作椅子になっています(一方でデンマーク本国では、ボーエ・モーエンセンが生み出したJ39の方が、国民的な椅子として人気を得ているそうです)。

そこで私が実際に使用した体験談も踏まえながら、Yチェアの魅力についてまとめて紹介します。

1.洗練された美しい造形

まずは椅子の造形です。部屋の中に置いて毎日のように目にしていても、その造形の美しさから見飽きることが無く、眺めてしまいます。ただ決して主張し過ぎることなく、他のインテリアとも馴染みながら、存在してくれます。

ウェグナーは中国の椅子からヒントを得て新たな椅子を生み出し、さらにその椅子から新たな椅子を生み出していくという”リ・デザイン“をする中で、Yチェアを生み出しました。そのためか、Yチェアはヨーロッパ産の椅子ですが、アジア圏のインテリアや建築様式にも良く合うデザインになっていると思います。この”リ・デザイン”という考えは、デンマーク人家具デザイナーであるコーア・クリントが提唱した”これまでのデザインを分析してより良いものにデザインし直す“という考えであり、この考えに共鳴するデザイナーたちが新たな家具をデザインしていくことで、名作と呼ばれる家具が次々と生み出されてきました。Yチェアは1950年に生み出されましたが、“デザインに継ぐデザイン”であるため洗練されており、今でも古さを感じること無く、むしろモダンな印象を与えてくれます

Yチェアを形造る各パーツは、単なる直線ではなく、曲線であったり、線の太さに変化があったりするため、それらが美しさの要因になっていますが、ただ美しいだけではなく、人が座ることを考え抜いた形になっています。例えばU字型のアーム部分は、座った時に腕が置きやすいような高さになっており、平均的な身長の方であれば、机を前にした時に、机と腕のラインが平行になる理想的な姿勢が取りやすいはずです。またアームは身体を包み込むような形状をしており、かつ高さは背面になるほど高くなっているため、人や机との距離などによって異なる理想的な肘の付く位置を、誰しもがどのような状況でも見つけられるようになっています。また座枠も同様ですが、体が密着するような箇所は、角が一切無いように面取りされており、触り心地が良くなっています。このように“使う人のことや使用される状況”のことを考え抜いた(人間工学に基づいた)デザインになっており、その形状はまさに機能美と言えるでしょう。

アーム部分

またY字の背もたれは、アイコニックになっており、それはまるで”イニシャルがYの人の椅子“ということを表しているようであり、イニシャルがYの私にとっては、自分のための椅子のように感じられ、より愛着が湧きます。

Y字の背もたれ

2.クラフトマンシップあふれる佇まい

座面は職人の手によって編まれたペーパーコードになっています。その名の通り”紙の紐”になりますが、樹脂が染み込んでいるため、通常の紙より耐久性があります。最初は硬く感じられるかもしれませんが、使用している間に、徐々に馴染んできます。数十年使用しているとペーパーコードがほつれたり、切れたりすることもあるかもしれませんが、その場合は張り替えできるため、いつでも新しい状態に戻すことができます。

ペーパーコードの座面は、木製やプラスチック製の座面と比較すると、通気性が良く、長時間座っていても蒸れづらいです。また座面に肌が触れた時に冷たいという感覚になりづらく、寒い時期にひんやりして嫌な思いをすることが少ないです。

ペーパーコードの座面

アームや背もたれ、座枠、脚などの木材は、比較的に安価なビーチ材の他に、少し高価なオーク材やウォールナット材などが使用されています。ビーチ材の場合、木目がわかりづらいため、ラッカー仕上げによって表面がコーティングされたモデルがありますが、その分、様々な色で塗装され、多くのカラーバリエーションが展開されています。私が使用しているモデルもこれに当たり、ブラック塗装されており、表面が滑らかで肌触りが良くなっています。一方でオーク材やウォールナット材の場合、木目をわかるようにするため、ソープやオイルで仕上げされ、特に着色されることも無く、素材そのものの風合いを感じられるモデルが多いです。

脚のラッカー仕上げ

木材の形状は一つ一つが複雑ですが、可能な限り機械化して人件費を押させえつつ、品質に関わるところは手作業で行うことで、クラフトマットシップが残る温かみのある椅子になっています。

3.時が経つほど増していく価値

Yチェアは、無垢の木から生産されており、オーク材やウォールナット材のモデルは、経年による変化が感じられ、新品では表せない風合いになります。使用している間に傷や凹みなどが付いたりするかもしれませんが、それらも独特の味となり、世界で唯一のYチェアに変化していきます。

デンマークでは”良いものを長く使い続ける”という文化が定着しているためか、Yチェアの場合、もし壊れても、メーカーや正規代理店などに修理を依頼すれば、パーツごとに新しいものに取り替えたり、傷や凹みなどは研磨して再仕上げすることで無くしたりできます。そのため壊れたら買い換えるしかない(プラスで処分費もかかる)安価な素材で作られた製品よりも、長く使い続けるられるため、長期的な目線になれば、高く見えていたYチェアの価格も、安く感じられると思います。

ヴィンテージ品はその経年分が価値として加わって価格が上がり、新品も物価高の影響で価格が年々上昇しているため、新旧関係なく売却価格が一定しており、リセールバリューが高い(購入価格と売却価格の差額が小さい)傾向にあります。数年後には、購入した時よりも価格が上がっているかもしれないため、投資的な価値もあると言えます。

一方でYチェアは、通販サイトなどで模造品が多く出回っています。これらは”リプロダクト品”や”ジェネリック家具”などといった言葉で表現されることがありますが、実際には似ても似つかない製品です。少し見ただけでは本物と見分けが付かなくても、曲線の美しさや各パーツの接合具合、ペーパーコードの編み方など、本物と比較すると、質の違いは明らかです。長く使い続けようとしても価値は上がらず、途中で壊れて使えなくなり、その処分費と新しい椅子の購入費が余計にかかってしまうでしょう。そのようなものがYチェアとして購入され、評価されてしまうことは、品質にこだわって生産しているカール・ハンセン&サン社やその職人たち、生みの親であるウェグナーなどに対して大変失礼かつ迷惑な行為です。そのため、私たち消費者は、”質の良いものを購入して使用する“ことで、そのデザイナーやメーカーが評価されてさらに良いものを造り、より良い製品が生み出されていくようにするためにも、このような劣悪な製品を見つけたら、安くても購入しないことが大切です。

Yチェアに関する本について

上記の投稿でも紹介していますが、Yチェアの魅力についてもっと知りたい場合は、以下の本がオススメです!

まとめ

Yチェアの魅力について、

1.洗練された美しい造形

2.クラフトマンシップあふれる佇まい

3.時が経つほど増していく価値

の3つの観点から紹介させていただきました。

Yチェアは模造品が多いため、上記の魅力を共有するためには、カール・ハンセン&サン社または正規代理店から購入する必要があります。下記に私が実際に購入した正規代理店のリンクを貼っておきますので、是非こちらからご購入ください!

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